アメリカ人と結婚し永住権でアメリカに住んでいる日本人が永住権か市民権かで悩むきっかけは大抵の場合は遺産相続がらみなんだそうです。
日本では相続する人に税金が発生するので相続税、アメリカでは遺産を持っている人に税金が発生するので遺産税(Estate Tax)と言うそうです。遺産税は相続した人ではなく遺産を持っている人が払います。で、税金をさっ引かれた後の遺産を相続人が相続します。
で、この遺産税ですが、2011年の場合(毎年変わってます)、遺産が500万ドル(強引に1ドル=100円として5億円ですね)以上の場合、最高35%の遺産税が発生します。しかし、これは配偶者以外の相続の場合です。例えば子供とか孫とか....。
では配偶者の相続の場合はどうなのか、遺産税は無しです。
夫婦の間での遺産の相続の場合は夫婦間無制限控除(Unlimited Marital Deduction)というのが適用されます。夫婦間の遺産相続の場合、どんなけ遺産があっても税金はかかりません。
但し!遺産を相続する配偶者がアメリカの市民権を持っている場合に限り、この婚姻控除が認められるのです。はい、永住権と市民権の違いはここです。
ま、私の場合は悩む必要なんてないんですけどね、だってどう考えても500万ドルの遺産は無いもん(笑)。宝くじが当たったら別ですけど。
でも500万ドル以上の遺産があったらどうよっていう好奇心はありますよね。
その場合、救済策はあるのです。それがトラスト(信託)です。
適格国内信託(Qualified Domestic Trust)というのがあります。
この場合、アメリカに居住している外国人配偶者でも市民権を持つ配偶者と同様の夫婦間無制限控除(Unlimited Marital Deduction)が適用されるというもの。
こうやって考えると、このQDTというのに入っていれば、別に永住権のまんまでもかまわないわけですが、なにせ税金関係の法律って毎年変わるし、QDTという特例も廃止にならない保証はないですしね.....。
ついでにもうひとつ、配偶者であろうとなかろうと、たとえ遺産が500万ドル以上あろうがなかろうが、遺産を相続するには、プロベイト(Probate)という裁判所による検認手続きがあります。これがまたかなり厄介なんだそうです。とにかく時間がかかる。一年くらいはかかるらしいです。その上、費用までかかるんだそうです。遺産総額の2〜4%だそうです。あほらしくってやってられないってことで、このプロベイトを回避するためのトラストがあります。
生存者信託(Living Trust)と言うもので一般的にはA-Bトラストと呼ばれています。
これに入っておけば、裁判所を通さず、余計な費用を払わずにすんなり相続ができます。但し、弁護士、会計士、信託管理の費用がかかりますが、プロベイトの費用とかかる時間に比べたらましなんだそうです。
余談ですが、この遺産税は毎年改正されています。非課税枠は年々上がり、税率は年々下がるというお金持ち有利の改正という構図が続いていますね。驚くことに2010年は非課税枠が無し=遺産税廃止になりました。2010年に相続したお金持ちの子供達は超ラッキー。
この富裕層への減税政策は共和党のしわざですね(笑)。民主党は国民医療保険制度に賛成してやるから遺産税を廃止しろって脅されたんでしょうか......。でも2011年に当然ながら復活。2013年には最高税率55%なるらしいですよ。まぁ私のような一般小市民には一切関係のない雲の上の話ですが.....。
アメリカの遺産税の税率はこんな感じ↓
ウィキペディアより |
それに引き換え、日本の相続税は↓こんな感じ.....
ハーバード白熱教室のサンデル教授の講義をテレビで見た人は知ってますよねぇ。
遺産税も所得税も民主主義での富の分配は正義か否か ってやつです。でもその講義を受けているハーバードの学生の中には、その富を得るために人並み以上の時間を費やし努力をしたのだから、それだけの報酬を得られて当然で、その努力をしてこなかった人達に分配するのは不平等だと言っている学生がいましたね。
貧しい家庭から努力して奨学金でハーバードへ行くなんぞ昔はあったかもしれませんが、今はちがいますね。アメリカでは、こういう年間授業料が5万ドル(500万くらい)もするような、しかも成績もトップクラスの学生が全米&世界中から集まるような大学へ進学する子供達は、もともと高額所得家庭の子供達です。
日本でも同じですね、ここ何年も、東大へ進学する子供達の家庭の平均所得は全国一位です。小さいころからお金をかけた良い学校、良い教育、習い事などをずっとしてきているわけです。
生まれによって自分の力ではどうすることもできない環境ってのはありますね。
中にはいますよ。一般家庭に育った子供でも人並み外れた才能を持った子供たち。でもこれは一般的ではありませんね。実は我が家の二軒隣のお嬢さんがこれでした。幼稚園から高校まで地元の公立学校に行った普通の家庭の女の子でしたが、とにかく数学が並外れてできる。
で、奨学金で(もちろん全額無料、返済不要)、スタンフォード大学へ行きました。現在ロケットのエンジンを設計するエンジニアになってます。すご.....。
どうやったらそんな子供に育てられるんだろうと、そのお母さんの爪の垢をもらいたいのは私です(笑)。もう手遅れですけど....。
【注意】法律は改正されます。そして、私は法律や税金の専門家ではありませんので、ここに書かれていることは参考にとどめ、詳細は専門家に相談して下さい。
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ありがたい情報です。アメリカ人のパートナーを持つ人達が皆気になる事だと思います。早速、友人にこちらのブログ見るようメールを入れました。我が家も5Mとなると、まったくもって悩む必要はありません。(笑)でも、確かに法律はよく改正されので、チェック必要ですね。ノートをまとめていただいたような内容で、すごくよく理解できました。感謝!
返信削除MEEKさま
返信削除コメントありがとうございます。
実は我が家では2009年の年末に相続が発生しました。そこで弁護士とのミーティングで初めて知った事実でした(笑)
幸いうちはABトラストのおかげでプロベイトにならずに済みました。遺産税も3.5Mないし.....。
実はもうひとつあるんですよ。例えばお父さんが亡くなって遺産を妻であるお母さんが相続しますね。で、つぎにそのお母さんも亡くなって子供が相続する際、お父さんが亡くなったときに算出した遺産総額というかこの場合は不動産の査定額とお母さんが亡くなった時の不動産の査定額と比べて値上がりしていた場合は、そのキャピタルゲイン分にフェデラルタックスとステイトタックスがかかります。
我が家の場合はちょうど不動産の値下がりピーク時でマイナスだったため税金がかかりませんでした。
もし将来、ご主人のご両親から相続するものがある場合はよ〜〜く弁護士と相談しておいた方がいいです。