その前に、国籍についての簡単な説明から....。
出生による国籍の取得には二種類あります。
1)血統主義:生まれた子供は親の国籍と同じ国籍になるというもの。
2)生地主義:親の国籍に関わらず、生まれた国の国籍になるというもの。
アメリカは生地主義なので、どこの国の人でもアメリカで子供を生むと、その子供にはアメリカ国籍が与えられます。
日本は血統主義なので、外国人が日本で子供を生んでも、その子供は日本国籍を取得することはできません。両親のどちらかが日本人の場合のみ、生まれた子供は日本国籍を取得できます。
日本では子供が生まれたら14日以内に出生届けを提出しないといけませんね。
これが海外で日本人同士の夫婦またはどちらかが日本人の夫婦に子供が生まれた場合、日本大使館か領事館に3ヶ月以内に出生届けを提出しないと、日本国籍が取得できません。
実際に3ヶ月以内に出生届を出さないといけないということを知らずに、生まれた子供の日本国籍を取得していない場合も結構あると聞きます。
では生地主義をとっているアメリカ人の夫婦またはどちらかがアメリカ人の夫婦の子供がアメリカ以外の国で生まれた場合はどうなるのか。もちろん親がアメリカ人なので、その国にあるアメリカ大使館とか領事館に届け出をすれば、アメリカ国籍が取得できます。
我が家の息子達の場合、二人とも日本で生まれたので、14日以内に出生届を区役所に提出したのでもちろん戸籍もあります。そして母親である私が日本人なので日本国籍を取得し、生後3週間で日本のパスポートを発行してもらいました。同時にアメリカ大使館にも届出したので、アメリカ国籍も取得し、出生証明書とアメリカのパスポートを発行してもらいました。そして二重国籍となったわけです。
で、ですね、国籍の話をするといつも思い出す話がこれです。
東京に住んでいた頃、18年ほど前(1994年頃)の話。結婚して間もない時、北鎌倉に住んでいるダンナの友人宅へ遊びに行きました。ご主人はアメリカ人で奥さんが日本人で二人のお嬢さんがいました。
その二人のお嬢さんは日本生まれですが、お父さんがアメリカ人なのでアメリカ大使館に届け出をしたのでアメリカ国籍を持っていました。そして日本生まれでお母さんが日本人にもかかわらず日本国籍を持っていませんでした。
その時に奥さんから話を聞いてすっごい衝撃的な事実を知る事となったわけです。
日本は父系血統主義だったのです。お父さんが日本人の場合のみ生まれた子供は日本国籍を取得できるということです。なんとこれが1984年まで続いていたという事実。その二人のお嬢さんは1984年以前に生まれたので日本国籍が取得できなかったわけです。
まるで、お父さんが天皇でないとその子どもは天皇になれないという、今の天皇家の万世一系男系男子みたいなやつですねぇ。
東京に国際結婚を考える会というグループがあります。自分の子どもに日本国籍を継がせたいという思いで、国際結婚をしている7人の女性によって1980年に作られたそうです。署名運動など国籍法改正のためいろいろな運動をしたそうです。現在もいろいろな活動をしています。
で、その当時の多国間条約の女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約(女子差別撤廃条約)に日本政府も批准しないといけない状況も絡んで、1985年の国籍法改正により、両親のどちらかが日本国籍を有する場合、生まれた子どもは日本国籍を取得できることになりました。父母両系主義です。
1985年の国籍法改正の際に、おそらく父親が日本人でないために日本国籍を取得できなかった子供達への日本国籍取得のための特別措置とかがあったとは思いますが.....。
国際結婚を考える会のお母さんたちの努力もあって、二人の息子達の日本国籍があるんだなぁと、子供の国籍の話になるとこれをしみじみと思い出します。それにしても、1984年ってつい最近ですよ.....。
それでですね....、この話には続きがあります。この日本の国籍法が父系血統主義だったのは昔からそうだったわけではないようなのです。昭和25年から、つまり1950年〜1984年の間だけだったそうです。これまた不思議なことです。昭和25年に国籍法が改正されてそうなったようです。明治時代にできた国籍法では、お父さんでもお母さんでも、どちらかが日本人なら日本国籍を取得できていたのだそうです。
あるサイトで、この30数年間だけの謎の国籍法の改正の理由(仮説)が書かれているのを読んだことがあります。それによると、『終戦直後から日本に進駐してきた駐留米軍兵と日本人女性との間にできた子どもに日本国籍はやらない!という極めて恣意的かつ怨念に満ちた国籍法改正』だということです。もしこの仮説が本当なら、怖いですね.....。
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